札幌光星中学校・札幌光星高等学校

校長メッセージ

「心の目」をひらき、「いのち」と「平和」のために「善」を選択する力を

校長 駒井 健一郎

 わたしたちは「幸せ」とは、「お金があれば…」「地位があれば…」「才能があれば…」「健康があれば…」と、何かを所有することと考えがちです。しかも皮肉にも何かを手に入れた瞬間からより多くを所有することを考え、そのことが目的となり、その状態の維持のために手段を選ばないよう魂が梗塞します。今日のような高度な競争情報社会では、真の「幸せ」を見極め、実践することは途方もなく骨の折れる作業となっています。しかし、その苦難との対峙で備わる忍耐と超越するための叡智を身に着けなければ、恒久平和な世界を作り上げることはできません。本校での学びを通し、この崇高な課題に臨むため、「心の目」をひらき、他者のためにはたらくことを「善」とする生き方を知り、社会に不断に貢献する人物へと成長することを願います。

5月の全校朝会 20254年5月15日

 みなさん、おはようございます。
 今年度からみなさんの授業が極力確保されるよう、全校朝会についても毎回1時間使うことなく運営する工夫として、本日はzoomでの配信という方法をとることにしました。どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、新学期が始まり、GWを挟んで一か月が経ち、新入生のみなさんも札幌光星の一員として馴染んできた頃ではないでしょうか。この間、大きな事故もなく、みなさんが元気に登校し、私も毎朝、校門で爽やかな挨拶を交わすことができ、大変うれしく思います。また野球部のみなさんが校舎までのローターリー周辺を竹ぼうきで掃除をしてくれ、さらには北13条通り沿いのグラウンドのごみ拾いをしてくれるおかげで、きれいな状態で学校生活が始まることを心から感謝します。ありがとう。
 みなさんへの感謝は、4月に実施したタイ・ミャンマー大地震への緊急募金のこともあります。新学期早々でしたが、カトリック研究部と生徒会執行部のみなさんの声掛けで13万9,571円の寄付を集めることができ、今この瞬間に必要な方への支援をすることができました。ありがとうございました。
 さて、こちらはすでにみなさんもご存じのことでしょうが、5月8日にカトリック教会の新しい教皇としてアメリカ合衆国出身としては初めてとなるロバート・プレヴォスト枢機卿が、バチカン市国のシスティーナ礼拝堂でのコンクラーベで選出され、第267代のローマ教皇になり、「レオ14世」と呼ばれることになりました。ただし、司教になる前から宣教師として長年、ペルーで活動したため、アルゼンチン出身の前教皇フランシスコと二代続いてのラテンアメリカ出身ともみなされています。新教皇レオ14世は、5月11日、サンピエトロ広場で即位後初めての講話を行い、「戦争はもうやめよう」と約6000万人が犠牲となった第二次世界大戦終結から80年を迎えたことを指摘されました。そして「愛するウクライナ国民の苦しみ」を心に刻んでいると述べられ、今後の交渉を「真の公正かつ永続的な平和」につなげるよう訴えられました。またイスラエルとパレスチナの紛争に「深い悲しみを覚える」と述べられ、即時停戦、人道支援、すべての人質の解放を求められました。この他、インドとパキスタンの交渉が両国間の永続的な合意につながるよう願うと期待を示されると同時に「世界には他にも多くの紛争がある」と指摘されました。前教皇フランシスコと同様、新しい教皇の平和への強い願いによって世界中の争いが完全になくなることを願わずにはいられません。
 さて今日は、みなさんに本校が今年から来年に向けて大きく変化していくことについて、二つお話します。
 一つ目は、すでにみなさんもご存じの通り、本校は、先月下旬に北海道医療大学と高大連携協定を結びました。医療系総合大学として看護、薬学、歯学、理学療法、心理学などで高度な教育環境をもつ北海道医療大学との提携により、将来、医療のフィールドで活躍を目指す高校生への魅力ある様々なサポートを提供してまいります。例えば、北海道医療大学に訪問し、様々な医療分野の研究を体験できるようになったり、大学生と一緒に調査研究を行ったり、ボランティア活動を企画したりといったことができるようになると思います。もちろん、3年後に話題のエスコンフィールドの隣にキャンバスが移転する北海道医療大学への進学についても、これまで以上に大きなチャンスが広がっていきます。また、次年度以降は高校在学中に北海道医療大学の講義が受けられるようになるプログラムもスタートする予定です。
 今回の北海道医療大学との高大連携協定は、単に北海道医療大学への進学に関することではなく、また単に将来国家資格の取得を目的として医療系の大学を検討するということだけでなく、北海道の過疎地域が抱える医療の課題を学び、日本や世界の中央と地域との医療格差を把握し、その解決策を考え、近未来の医療環境の在り方を模索することです。私たちが住む北海道では、少子高齢化の進行で、すでに札幌圏とそれ以外で医療や福祉のサービスを受けられる環境に大きな差が生じています。この問題は、首都圏と北海道という視点でも大きな格差となっていますし、その傾向は今後さらに深刻に進展していくことでしょう。この問題の解決のキーワードは、情報通信技術の発達とネットワーク化の進展であると考えます。北海道や日本全域の医療環境向上というミッションを深く理解し、医療の世界で社会に貢献することを希望する一人ひとりに、その先の高等教育での探究の明確な目標を設定してもらえるようなプログラムをみなさんに提供していきたいと考えます。
 また、今回の北海道医療大学との高大連携以外にも、2年ほど前からの上智大学との高大連携やハワイのセントルイススクールとの姉妹校提携を進めてきましたが、今回さらに、マリア会が経営する韓国の木浦マリアニストスクールとの交流が開始されます。来月からは、4,5年生の希望者対象で韓国の姉妹校との英語でのzoom交流会が決定しましたので、オンライン上でも異文化理解・国際交流の機会をもつことができるようになります。ぜひ多くのみなさんに参加してほしいと思います。
 そして、今日、もう一つみなさんにお話しすることは、2026年度から土曜日の午前授業を見直すことにするということです。これまで、本校では進学校として、十分な学習の量と質を確保するという観点から、土曜日に午前中4時間の授業を実施し、中学生やステラコースでは週3回の放課後講習などを実施してきました。これを来年度から見直す理由は次の3つです。第一に、土曜日の授業が行事や休日でつぶれることが多く、科目によっては、土曜日に授業ができないことで学習進度が大幅に遅れることがあったという点。第二に、中学校のルクスプログラム、高校の総合的探求の時間などのプレゼンテーションなどは、土曜日などを使い、より長い時間で調査したり、発表の準備をした方が、より充実したものになり、みなさんの主体的な活動をサポートできる点。第三に、課外活動の時間を確保する点。これは、本校の部活動やサークル活動もそうですが、学校の活動以外にも個人的に取り組んでいること、習い事などの諸活動、ボランティア活動、あるいは様々なコンクールやコンテストに挑戦すること、さらには家族との時間など、一人ひとりのチャレンジを応援する時間を確保していこうと考えた点。大学入試も様々な形式になってきている中、みなさんのタレントをどんどん大きくするために様々な成長の機会に挑戦するスペースを作るべきではと考えたのです。
 その一方で、これまで通り、学校の中で、しっかり学習しよう。大変な勉強をみんなで乗り切ろうという考えも維持するため、来年度からは、これまで1コマ50分の授業を55分に変更します。これにより、学校での授業時間は、学級活動(LHR)を除くと、これまでは1週間で平日6コマ×5日+土曜日4コマの合計33コマ。1コマが50分でしたから、1週間で1650分でしたが、来年度からは、1週間で平日6コマ×5日で30コマ。1コマを55分に変更しますので1週間で1650分で合計の学習時間としては増減しておりません。これまで、土曜日が行事や休日で実施されなかったケースが多かったことを考えますと、実質的には、指導している時間は多くなるとイメージしています。
 さて来週は、インターハイ特別時間割が組まれているように、6年生にとっては最後のシーズン、集大成となる大会が始まります。みなさんの健闘を心からお祈りいたします。もちろんみなさんが勝つことや優秀な成績をおさめることを願っていますが、それ以上に大切な何かのために力を尽くすことができるよう心からお祈りします。その大切な何かは、一人ひとり違うでしょうし、すでに見つかっている場合もあれば、来週からの集大成の中で見つかる場合もあれば、もっと後になって気付く場合もあるでしょう。そして、その大切な何かこそが、みなさん一人ひとりの素晴らしい人生を支える大きな力となるものなのです。大切な何かに出会うタイミングは人それぞれですが、勝ち負け以上に大切な何かが隠されているということをイメージして、それぞれの決戦に臨んでください。

令和7年度 始業式  2025年4月8日

 本日より令和7年度の学校生活がスタートいたします。昨日の中学校入学式で107名、高校入学式で405名の新しい仲間を迎え入れることができました。真新しい制服に身を包み、緊張の面持ちでこの場に臨んだ新入生のみなさん、あらためて、入学おめでとうございます。
 先輩、先生、その他たくさんの学園で働く方々は、心より皆さんのことを歓迎します。まだまだ馴れない新生活で不安に感じることも多いと思いますが、私たち光星ファミリーは、皆さんのことを全力でサポートします。ぜひ、頼りにしてください。
 今朝も校門の前で皆さんと元気な挨拶を交わすことができました。今日一日を活き活きと生活するためのパワーを受け取ることができました。中学生277名、高校生1084名、全校生徒1361名、そして教職員129名、清掃してくださる方や警備の方、学生食堂の方々を合わせると、毎日この学園に関わる方々は1500名前後になります。この学園で一緒に生活するファミリーが、毎日、笑顔で挨拶を交わし、この空間を愛してくれたら最高です。また、みなさんの御家族や同窓会、後援会の方々を含めますと、3万から4万名の方々が光星を支えてくれています。本校に関わる全ての方々にとって信頼と安心の場となるよう今年度もみなさんの協力をお願いします。
 先月の終業式の際にも先輩たちの大学合格実績について紹介しました。その後も吉報は続き、国公立大学合格は188名(うち現役168名)、東京大学2名、京都大学2名、大阪大学2名、東北大学、九州大学、そして北海道大学に13名の合格など、大きな実績を残してくれました。また、難関私立大学にも関東圏では早慶上理23名、MARCH43名、また関西圏では関関同立30名の実績を残しました。昨年度は、5度にわたる野球部全校応援や90周年記念式典慰霊ミサなど、例年になくたくさんのイベントがあり、腰を据えて受験勉強に臨むタイミングをとることが難しい状況の中、多くの先輩が部活動を3年間全うし、あるは光星祭などの行事、生徒会活動も全力で取り組み、与えられた環境に心から感謝し、仲間との連帯を大切にし、自分たちのベストを尽くし、最後まで粘り強くチャレンジした先輩たちは、本当に立派でした。
 後輩のみなさんにたくさんの勇気をあたえてくれた先輩たち。こういった先輩たちの姿勢こそが本校の校訓である「地の塩 世の光」の意味するところです。自らの才能に気付き、磨き上げ、その才能を必要とする方々に惜しみなくあたえ、平和な社会を作るための一員となるという「光星プライド」を、是非みなさんも引き継いでください。
 さきほど、山﨑神父様が朗読された「ローマの信徒への手紙13章8~10節」の中で、もっとも大切な御言葉は、

 「隣人を自分のように愛しなさい」

 この御言葉と同じメッセージが、昨日の入学式で朗読された「マタイによる福音書7章7節~11節」では、

 「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」

と語られています。

 最近、わたしたちの身の回りで起こっていることに丁寧に目を向けると、世界では紛争が続き、貿易戦争で国際関係は緊張感が高まり、国境を越えたネット犯罪、あるいは国内でも物価高を原因とするような犯罪、ハラスメント問題などなど。本来、私たちが望むような心温まるような、愛情を感じとれるような状況とは程遠い出来事ばかりで、息苦しくなってしまいます。自分さえよければいいという発想で、他人の痛みに鈍感な行動が目につきます。しかも権力者やリーダーが、そのような問題を煽るかのように大きな声で世界を回しているような雰囲気が漂います。そういった中にあっては、少なくない人々にとって「幸せ」とは、「お金があれば…」「地位があれば…」「才能があれば…」「健康があれば…」と、何かを所有することに固執してしまいがちですし、しかも皮肉なことに何かを手に入れた瞬間からより多くを所有することばかり考え、所有することが目的となり、そのために手段を選ばないような精神状態にまで陥ってしまいます。こうした功利主義やそれを巧妙に操作する高度な情報社会の洪水に身を任せ、損得のみを判断の基準にすることに慣らされていくと、真の「幸せ」を見極め、実践することは途方もなく骨の折れる作業となってしまいます。更にAIを代表とする昨今のテクノロジーの発展は、今日の不安定さを助長していくような気がしてなりません。
 私たちは、この先も、心穏やかに、関わる方々を信頼して平和な世の中を築いていくことができるよう、今こそ目の前にある苦難と対峙し、忍耐し、その忍耐を通してそれらの苦難を超えていくための叡智を身に着けなければならないのです。新学期スタートにあたりみなさんが本校での学びから、この崇高な課題に臨むため、他者のためにはたらくことを「善」とする生き方を知り、社会に不断に貢献する人物へと成長することを期待します。

令和7年度 中学校入学式  2025年4月7日

 大きな可能性に瞳を輝かせ、この場に臨まれた107名のみなさん、今、名前が呼ばれ、入学が許可されました。札幌光星中学校への御入学、誠におめでとうございます。みなさんの入学を心より歓迎いたします。
 本日ご来賓の父母の会会長、相馬修司様、そして祈りを執り行ってくださっている本校の経営母体であるマリア会日本地区長の市瀬幸一神父様とともに、この良き日をお祝い申し上げます。また、これまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
 本校は1934年の創立から数え、昨年の11月に90周年という大きな節目を終え、2034年の創立100周年へ向け、さらに発展をしていこうとしている学園です。これまでに3万名以上の卒業生を輩出し、先輩たちは北海道内にとどまることなく、さまざまなフィールドで活躍をしています。みなさん一人ひとりも、そうした先輩たちと同じように次の時代を切り開く希望に満ちた存在として活躍することを心から願っています。
 新入生のみなさんは、札幌光星での新生活の中で、何を楽しみに入学したでしょうか。教科書を使わない光星独自の探求的学びであるルクスプログラムでしょうか。フレンドシップミーティングやサマースクールなどの宿泊行事でしょうか。運動系や文化系の中から自分が興味のある活動に取り組むことができるサークル活動でしょうか。学校祭やスポーツデイ、遠足や芸術文化発表会などの行事でしょうか。あるいは、たくさんの英語体験や異文化交流ができるイングリッシュキャンプやオーストラリア研修旅行でしょうか。また今年度から7月下旬に本校の経営母体であるマリア会が運営する日本の5つの姉妹校の仲間60名余りが一緒になり、同じくマリア会が運営するハワイのセントルイス校を訪問し、そこの学園寮での1週間の研修という新しいプログラムも始まります。こういった多彩な行事やアクティビティをはじめ、これから始まる6年間の学校生活のすべての学びは、一つ一つが凝縮された札幌光星ならではの内容であり、それぞれの体験は、みなさんがより豊かな人間性を備えていくために深い味つけをし、連動し、大きな財産を築いていくことでしょう。みなさんは今日この瞬間からすべての学習、すべての行事、すべての出会いに心を開き、すべてを吸収し、自らの成長の糧としてください。
 そして、そのような日々の積み重ねは、その先の大学進学という大きな目標に向かってチャレンジする力を着実に備えていくのです。この春に卒業したみなさんの先輩方も、6年間を通し、札幌光星の生徒としてのプライドを身に着け、自らが希求する将来をしっかりとイメージし、夢を叶えるに相応しい進路へ勇気をもってチャレンジしました。そして東京大学、大阪大学、北海道大学など難関大学への合格を果たしました。 
 努力をし、目標である大学に合格することは素晴らしいことですが、それ以上に大切なことや見失ってはいけないことがあります。それは、人として大切なことが何であるかを「知ること」、そしてその大切なことのためにブレることなく「行動すること」、さらには大切なことへの自分の解釈が間違っていないかを周囲の人に誠実に「聞くこと」です。最近はAIの技術が進歩し、人間が何もしなくても不便なく暮らすことができる世界がすぐそこまで来ているという話をよく見聞きします。しかし本当にそうなのでしょうか。私たちが「生きる」ということは、多少の苦労があったとしても、私たち自身の意志で切り開くべきものではないでしょうか。人との関わりすらもAIに任せてしまうことが可能なほど、この先もテクノロジーは進化し続けるでしょう。しかし、自分の魂までAIに乗っ取られることに疑問を持たなければなりません。正しく選択する知恵や意志をもつことなしに文明の利器を無抵抗に受け入れるようなことがあってはならないのです。「みんながそうしているから」という理由で何かを選択しているとしたら危険です。そのような「みんな」は、今やAIが巧妙に作り出し、都合よくわたしたちを導いている可能性が高いのです。みなさんの大切な人生がビッグデータの確率論で決定されるなんて許されません。みなさんはこの地球上で唯一無二の大切な存在であり、みなさんは自分の意思をもって、みなさんの人生をたくましく開いていかなければならないのです。また、みなさんの人生は、みなさんだけのものでもありません。世界中の方々の幸せのためにみなさんの大切な人生が豊かに扱われなければなりません。洪水のように迫ってくる情報に押し流されるままにするのではなく、みなさん自身が膨大な情報の中から真実と正義を見極める力を養い、「善」のために行動できる行動力やいつまでも自分の成長を止めることのない謙虚さを身に着け、多くの人の幸せのために働ける人にならなければなりません。
 先ほど朗読された新約聖書「マタイによる福音書7章 7節~11節」の中で、札幌光星が最も大切にしている考え方は一番最後のところです。もう一度その箇所を朗読します。

 「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」

 本日入学されたみなさんには、本校での6年間で、他者のために生きる喜びを本当の喜びとすることができるよう、知的にも人間的にも大きく成長することを期待します。本校の校訓「地の塩 世の光」とは、自分自身の優位性をひけらかすことなく、自分の持てる力や才能を、それを必要とするすべての方に惜しむことなく差し出すこと、世界が平和になるよう、自分自身の持ち場でベストを尽くし、社会に貢献できる大人へと成長しなさいということです。札幌光星は、常にそのような姿勢をみなさんに求めます。他者との関わりによってしか、自分の幸福の実現に至る道が開かれないことを知り、他者のために尽くすことを歓びとする人になってください。札幌光星は、みなさんがその理想を実現するために心を込めてサポートしてまいります。
 保護者の皆様、御子息、御息女の本校への御入学に御理解、御協力をいただき、心から感謝申し上げます。環境が大きく変わり、まだ12歳のお子様を遠くの学校に通わせること、あるいは親元から離し、寮生活をスタートさせること、何かと御心配なことも多いかと思います。学年主任、担任、副担任をはじめ、学園が一致団結してサポートしてまいります。また本校は「学校は楽しいところ」をモットーとしております。どうぞ安心してお子様を送り出してください。多くの仲間との関わりの中で、人間味豊かに成長していく姿を毎日楽しみに送り出してください。これから6年間の御支援と御協力を重ねてお願いいたします。
 新入生のみなさん。みなさんが6年後に有終の美を飾り、次のステージへと羽ばたいていくことを心より期待しております。

令和7年度 高校入学式  2025年4月7日

 大きな希望、そして目標を胸に、この先の自らの学びへの強い意志をもち、この場に臨まれた6カ年コース68名、マリスコース319名、ステラコース18名、合計405名のみなさん、今お名前が呼ばれ、入学が許可されました。札幌光星高等学校へのご入学、誠におめでとうございます。本日ご来賓のPTA会長、伊奈郁翁様、そして祈りを執り行ってくださっている本校の経営母体であるマリア会日本地区長の市瀬幸一神父様とともに、この良き日を心よりお祝い申し上げます。また、これまでみなさんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
 本校は1934年の創立から数え、昨年の11月に90周年という大きな節目を終え、2034年の創立100周年へ向け、さらに発展をしていこうとしている学園です。みなさんは本校の第91期生となります。札幌光星は、これまでに3万名を超える多くの優秀な卒業生を輩出してきました。本校の歴史と伝統は、先輩方が築き上げた財産の積み重ねによるものです。みなさんも札幌光星の生徒として、その名に恥じぬよう責任と自覚をもって行動してください。
 先ほど朗読された新約聖書「マタイによる福音書7章 7節~11節」の中で、札幌光星学園が最も大切にしている考え方は、一番最後のところです。もう一度その箇所を朗読します。

 「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」

 2020年以降、世界はあらゆるタイプの大きな変化に晒され、誰もがその行き先がどこで、この先の世界がどうなるのか、それぞれの立場でそれぞれに不安を感じています。もちろんここ最近の大きな変化の前から、グローバル化や情報化がそれまでの感覚以上のスピードで進展していましたが、今よりは明るい未来を創るためにという共通の利益に向かって進展していたように感じます。しかし新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響を受けた世界は、その始まりこそ、「すべての命を守る」という人類共通の脅威に立ち向かう点で結束できたものの、緊張して対応しなければならない、不自由な日常生活が長くなるにつれ、利己的な発想や、弱肉強食がまかり通るような雰囲気へと移ろいでいる印象をもちます。ウクライナやパレスチナでの紛争にみられる大国のリーダーたちの偏狭なナショナリズム。石油や食料などの価格の乱高下を誘発するマネーゲーム。自由に操作できる立場の者とそうでないものと間で著しい損得を生んでしまう危険性が高い高度情報社会。そういった背景にあって、声の大きな者、華やかな者に注目が集まり、小さき者や弱き者が必要以上の忍耐を強いられている印象をうけます。強いか弱いか、富んでいるか飢えているか、上か下か、右か左か。今が何とかやりくりできていても、いつ転落してもおかしくないという不安定さから、誰もが積極的に「正義」や「善」のために発言し、行動することに躊躇している印象を受けます。そしてこの不安から逃れるため、様々な決定を他人からの情報に頼り、安易に委ねるような印象を受けます。しかも、厄介なことは、その情報の出所が人間ではなく、知らぬ間に多くの決定をAIが出している可能性が高いということなのです。大量の情報を瞬時に分析し、より確率の高い方法を提案する能力は、もはやAIにはかないません。すでに様々な場面で私たちの選択の多くは、AIの決定に従うようになってきています。そしてこのスピードは今後ますます加速してくことでしょう。
 わたしたちには、自分自身が今ここに生き、生かされている一瞬一瞬の出来事について、検証し、真理を追究する姿勢が求められます。人間が他の生物と明らかに違うのは、意思があり、自己を犠牲にして多くの仲間が幸せになるために行動することを明確な意思をもってできるという点です。歴史をふりかえれば、文明の発展は人間が幸せになるために進んできましたし、幸せになることを前提としたルールをわたしたちは整え、人間主体で「善」を選ぶ決定をしてきたはずです。ところが、本来そのような人間のもつ真理・真実をベースとして開発されたはずのAIが、われわれ人間の意志の世界を、意思によって「善」なるものを選択する力を奪い去ろうとしています。今は、AIによる恩恵をより多く受けることができる立場の人が、世界全体の平和や発展のためにそのテクノロジーを正しく利用することが求められますが、このルールが不明瞭で信用しきれない状況にある点で、多くの人にとって未来は不安定なものと感じられているのではないでしょうか。
 この危険性に今こそ気付き、どうすることがわれわれ人間にとって相応しい発展の方法なのかを問い直すべき時なのです。歴史から学ぶ姿勢を未来を託されているみなさんには、ぜひ身に着けてほしいのです。
 人として最も大切にすべきものを知り、大切なものを見極め、大切なものを守り通す知恵と勇気を身に着けてほしいのです。
 今日の不安な世界、不安な未来は確かに心地良いものではありませんが、わたしたちにはその状況を時計を戻して変えることができない以上、今を生きるわたしたちの「運命」として受け入れなければなりません。
 みなさんの中には15の春がイメージ通りにいかず、今この瞬間も心の整理が完全についていない状態で入学式の席についている方もいるかもしれません。しかし、わたしたちは自分の力で過去を変えることができない以上、現在を受け入れ、前を向き、未来に向かって歩いていくことしかできません。ただ変えることができない過去に対し、受け入れざるを得ない現在に対し、いかなる「運命」にも意味があるはずであると洞察し、未来をよりよく、強く、しなやかに生き抜くための教材とすることはできるはずです。ぜひ、「運命」が自分を成長させてくれることに感謝できる人となるよう札幌光星でベストを尽くしてください。
 札幌光星には、お互いを大切に思う仲間がたくさんいます。いつも明るく挨拶を交わし、優しい心で支え合い、成功を願い、応援する雰囲気にあふれています。安心して学校生活を送ることができる日々を支えてくれる、たくさんの先生方、先輩、そして共に新生活を始める405名の仲間がいます。この学園で関わる多くの方々と連帯し、分かち合い、赦し合う素晴らしさを実感してほしいと願います。あたえられた環境でベストを尽くし、弛まぬ努力を続け、自分にあたえられた才能を丁寧に磨き上げ、多くの人の助けとなる人になってください。これこそ本校の教育方針と理念です。本校の校訓「地の塩 世の光」とは、自分自身の優位性をひけらかすことなく、自分の持てる力や才能を、それを必要とするすべての方に惜しむことなく差し出すこと、世界が平和になるよう、自分自身の持ち場でベストを尽くし、社会に貢献できる大人へと成長しなさいということです。札幌光星は、常にそのような姿勢をみなさんに求めます。他者との関わりによってしか、自分の幸福の実現に至る道が開かれないことを知り、他者のために尽くすことを歓びとする人になってください。札幌光星は、みなさんがその理想を実現するために心を込めてサポートしてまいります。
 保護者の皆様、御子息、御息女の本校への御入学に御理解をいただき、心から感謝申し上げます。環境が大きく変わり、何かと御心配なことも多いかと思います。担任をはじめ、学園が一致団結してサポートしてまいります。学校は楽しいところです。どうぞ安心して学校に送り出してください。これから3年間の御支援と御協力をお願いいたします。

過去のご挨拶