
2010年以降に誕生した「α世代」は、生まれた瞬間からスマートフォンやAIに囲まれて育つ、完全なるデジタルネイティブです。アルゴリズムが瞬時に「最適解」を導き出し、効率やスピードが重視される社会は、これからさらに加速していくでしょう。
しかし、これからの時代に本当に求められるのは、「最適解」に最速で辿り着く力だけではありません。数ある答えの中から、何が正しく、何が人のためになるのかを問い続け、選び取る力です。アルゴリズムが差し出す答えをそのまま受け取るのではなく、迷い、立ち止まり、対話し、他者を思う――そうした遠回りで不器用な「人間らしい経験値」こそが、AI時代における人の知性を形づくります。
本校は、テクノロジーと共に生きる時代だからこそ、「人としてどう生きるか」を学びの中心に据えたいと考えています。どれほど社会が変化しても揺らぐことのない価値、他者のために働くことを「共通善」とする生き方を育み、社会に貢献し続ける大人へと成長する過程を、学校・家庭・地域が連携して丁寧に支えていきます。
人類とAIが真に共存する未来を見据え、次代を担う「α世代」を育てること。それこそが、本校の教育の使命です。
みなさん、おはようございます。
本日より令和8年度の学校生活がスタートいたします。
昨日の中学校入学式で126名、高校入学式で420名の新しい仲間を迎えることができました。真新しい制服に身を包み、緊張の面持ちでこの場に臨んだ新入生のみなさん、あらためて入学おめでとうございます。
先輩、先生、そして学園で働く多くの方々は、心よりみなさんを歓迎します。慣れない新生活に不安を感じることも多いと思いますが、私たち光星ファミリーはみなさんを全力でサポートします。ぜひ頼りにしてください。
今朝も校門でみなさんと元気な挨拶を交わすことができ、今日一日を活き活きと過ごすための力をたくさんもらいました。中学生315名、高校生1130名、全校生徒1445名、そして教職員132名に加え、清掃や警備、食堂で働く方々を含めると、この学園に関わる方々は、およそ1600名になります。この学園で生活するファミリーが毎日笑顔で挨拶を交わし、この空間を大切にしてくれることを願っています。
また、みなさんのご家族や同窓会、後援会の方々を含めると、約4万名の方々が光星を支えています。本校に関わるすべての方々にとって、信頼と安心の場となるよう、今年度も皆さんの協力をお願いします。
先月の終業式でも、先輩たちの大学合格実績について紹介しましたが、その後も吉報が続きました。国公立大学合格は168名、このうち現役が147名という結果です。また、私立大学は関東圏の早慶上理やMARCH、関西圏でも関関同立といった難関校に多くの合格実績を残しました。
多くの先輩が部活動を3年間全うし、光星祭などの行事や生徒会活動にも全力で取り組みました。与えられた環境に感謝し、仲間との連帯を大切にしながら、自分たちのベストを尽くし、最後まで粘り強く挑戦した姿は本当に立派でした。後輩のみなさんに大きな勇気を与えてくれたと思います。こうした先輩たちの姿勢こそが、本校の校訓である「地の塩 世の光」の意味するところです。自らの才能に気づき、それを磨き、その才能を必要とする人々に惜しみなく与え、平和な社会を築く一員となるという「光星プライド」を、ぜひみなさんも引き継いでください。
先ほど山﨑神父様が朗読された「ペトロの手紙(一)3章5~12節」の中で、私が特に心に響いた箇所をもう一度紹介します。
「悪から遠ざかり、善を行い、平和を願って、これを追い求めよ。」
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻以後、戦争に関するニュースが途絶えることがありません。イスラエルによるパレスチナへの壊滅的な破壊行為、そして今年2月末からのアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃と、その報復によるペルシャ湾岸の石油施設を中心とした破壊行為が続いています。石油を持たない我が国においても、経済活動への影響が出始めています。
これらの戦争は、いったい誰のためになっているのでしょうか。それぞれのリーダーは「国益」という言葉を用いますが、本当にその国の利益になっているのか、疑問を感じざるを得ません。自国の利益だけを追い求める先に、本当の利益があるのでしょうか。自分だけが幸せな世界は、決して真の幸せとは言えないはずです。
世界が平和を取り戻すために、私たちにできることは何か。一人でできることには限界があると諦めてはいけません。声の大きな主張を放置すれば、それはいずれ自分たちに跳ね返ってきます。その結果、遠い国の問題では済まされず、息苦しい社会へとつながっていきます。
経済格差、人種・民族差別、男女差別、いじめ、ハラスメント。わがままが通る社会は、人が人を傷つける社会にほかなりません。戦争を選ばないことは当然ですが、その原因となる心理や構造を改善する努力がなければ、根本的な解決には至りません。
そのためには、私たち一人ひとりが、弱い立場の人に寄り添うことを「善」とする倫理観を持ち、支え合う社会を築いていくことが必要です。今は、よく学び、よく観察し、行動する準備をする時です。そして聖書の教えにあるように、「隣人を自分のように愛する」ことを実践していくことが求められています。
こでいう「隣人」とは、単に近くにいる人ではありません。最も小さき人、最も弱き人、最も助けを必要としている人のことです。
私たちはこれからも、心穏やかに、互いを信頼しながら平和な社会を築いていかなければなりません。そのためには、目の前の苦難と向き合う必要があります。その苦難とは、自分の中にある欲やエゴイズムでもあります。自分だけが得をしたいという思いを抑え、その中で「隣人」に寄り添うことができた時、人は本当の意味で成長します。そしてその先に、心の平安と豊かな人生があるのだと思います。本校での学びを通して、自分らしく堂々と生きるための力を身につけていきましょう。
新学期のスタートにあたり、みなさんが本校での学びを通じて、他者のために働くことを「善」とする生き方を身につけ、社会に貢献する人物へと成長することを期待しています。
最後に、今年度の時間割について確認します。今年度から、みなさんの多方面での活動を応援し、多様な能力を伸ばす機会を増やすために土曜日の授業を取り止めました。その代わり、これまで50分だった授業を55分に延長し、週あたりの授業時間1650分は維持します。
また、8時30分からの朝読書はなくなり、朝のHRの後、1時間目は8時40分開始となります。昼休みや放課後の時間も昨年度より若干遅くなります。生活のリズムに変化はありますが、今回の変更の趣旨を理解し、徐々に心と体を慣らしていってください。土曜日が休みになることで、自主的に学ぶ時間が増えます。自己管理を身につける良い機会として、前向きに捉えてほしいと思います。
みなさんのチャレンジを心から応援しています。
大きな希望、そして目標を胸に、この先の学びへの強い意志をもって本日この場に臨まれた、6カ年コース80名、マリスコース318名、ステラコース22名、合計420名のみなさん。ただいまお名前が呼ばれ、入学が許可されました。札幌光星高等学校へのご入学、誠におめでとうございます。本日、ご来賓としてご臨席賜りましたPTA会長 佐藤暁哉様とともに、この良き日を心よりお祝い申し上げます。また、これまでみなさんを支えてこられたご家族並びに関係者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
本校は1934年、ドイツ人宣教師キノルド司教によって創立されました。カトリックミッションスクールとして当初は男子校として歩みを始め、進学校としての評価を確立してまいりました。さらに2008年には共学校へと再編され、向学心に富む女子生徒を迎え入れ、札幌の地において着実に発展を遂げてきました。地域の皆様からも「光星地区」として親しまれ、愛着を持っていただけるまでに、良き伝統を積み重ねてまいりました。そして、8年後の創立100周年を見据え、さらなる発展を目指している学園であります。
これまで本校は、3万人を超える優れた卒業生を社会に送り出してきました。本校第92期生となるみなさんには、先輩方が築いてきた歴史と伝統を継承し、その名にふさわしい責任と自覚をもって行動することを期待しています。
先ほど朗読された新約聖書「マタイによる福音書7章 7節~11節」の中で、札幌光星学園が最も大切にしている考え方は、一番最後の箇所です。
「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」
さて、ここで世界に目を向けてみましょう。ごく最近では、イランをめぐる緊張が急速に高まり、中東地域において軍事衝突の危機が現実のものとして強く意識される状況となっています。報復の応酬が連鎖し、事態は一層の拡大も懸念されています。現代は科学技術が進歩し、情報が瞬時に共有される時代であるにもかかわらず、このように世界各地で戦争や紛争が絶えません。4年前に始まったウクライナでの戦争、2年前に深刻化したパレスチナでの戦争。コロナによるパンデミックが収束する間もなく、世界のどこかで毎日多くの人の命が奪われる惨禍が繰り返されています。偏狭なナショナリズムを声高に主張する一握りの為政者は、平和を心から望む一人ひとりの思いにほとんど耳を傾けることなく、「国益」という利己的な正義を理由に戦争を拡大させています。
これらの戦争は、単なる出来事ではありません。資源を巡る争い、安全保障上の不安、民族や宗教の対立、歴史的な経緯、そして政治的な思惑が複雑に絡み合って生じています。つまり、どれか一つが原因なのではなく、人間のさまざまな欲求や恐れが重なり合った結果として起きているのです。
しかしながら、私たちはこうした現実に対して、どこか距離を置いてしまってはいないでしょうか。エネルギー価格の変動や物価上昇には敏感でありながら、その背景にある「命の問題」に対する感覚が、徐々に薄れているのではないでしょうか。「自分には関係がない」という意識。あるいは、「仕方がないことだ」と受け流してしまう感覚。そのような無関心や慣れこそが、結果として戦争を遠ざけるのではなく、むしろ許してしまう土壌になり得るのです。戦争を止めるためには、目の前の衝突を終わらせる努力と同時に、戦争を引き起こしている「根っこの部分」に目を向ける必要があります。
私は、AIに「現代の戦争の原因を、中学生にも分かるように説明してほしい」と問いかけてみました。すると、非常に整理された、分かりやすい答えが返ってきましたので紹介します。
戦争は、たった1つの理由で起きるわけではなく、いくつかの理由が重なって起きます。主なものは以下の5つです。
①こわいから(不安や疑い)
国どうしが「相手が攻撃してくるかもしれない」と思うと、先に準備をします。でもその準備が、相手には「攻撃しようとしている」と見えてしまいます。これを 安全保障のジレンマ といいます。お互いにこわくなって、どんどん関係が悪くなるのです。
②お金や資源のため
石油、水、土地などはとても大事です。それをめぐって争いになることがあります。「大事なものを取り合う」とケンカになるのです。
③文化や考え方の違い
民族や宗教の違いで、「自分たちのほうが正しい」とぶつかることがあります。考え方の違いが大きいと、なかなか仲直りできないのです。
④国のリーダーの考え
国のトップが、自分の力を保つために戦争を選ぶこともあります。国内の問題から目をそらすために外で争うこともあるのです。
⑤昔の問題が残っている
昔の戦争や約束が原因で、今も対立が続いていることがあります。例えば、第一次世界大戦の後の問題が、第二次世界大戦につながりました。「昔のケンカ」が終わっていないことが原因になるのです。
次に「上記の原因を解決する方法を教えてください」とリクエストすると、以下のような答えが返ってきました。
とても大事な視点ですね。結論から言うと、完全に戦争をなくすのは難しいけれど、減らす方法として、次の6つが考えられます。
①話し合いを増やす
国どうしがちゃんと話し合えば、誤解や思い込みを減らせます。「本当は攻撃する気はない」と伝えるだけでも、緊張は下がります。そのために、国際連合のような場所で話し合いが行われています。
②約束(ルール)を作る
国どうしで「これをやったらダメ」というルールを決めることも大切です。たとえば「民間人を攻撃しない」などのルールがあると、勝手な行動をしにくくなります。
③おたがいに助け合う関係を作る
経済や貿易でつながると、「戦争すると自分も損する」状態になります。仲良くしていたほうが得になる関係を作ることです。
④不安を減らす(軍事の透明性)
どれくらいの武器を持っているかを見せ合うことで、「こわい」という気持ちを減らします。こっそり準備していないと分かれば安心できます。
⑤教育や交流を増やす
違う国の人と交流したり学んだりすると、偏見が減ります。「敵」じゃなくて「同じ人間」だと分かるからです。
⑥貧しさや不公平を減らす
生活が苦しいと争いが起きやすくなります。みんながある程度安心して暮らせる社会にすることです。
確かに、どれも納得できる内容です。一瞬でここまで体系的に整理された答えが得られるという点において、AIは極めて優れた道具であると言えるでしょう。しかし、ここでみなさんに考えてほしいのです。AIの答えは、本当に自分自身の理解となっているでしょうか。その言葉の一つひとつを、自分の問題として捉えているでしょうか。そして、それを自分の言葉で語ることができるでしょうか。AIは、膨大な情報をもとに「もっともらしい答え」を導き出すことには長けています。しかし、その答えが私たち自身の思考の「本質に迫っているか」を判断する力は、私たち自身「人間」に委ねられています。便利さの裏側には、考える力を手放してしまう危険性があります。「タイパ」と称されるような効率を追い求めるあまり、思考の過程を省略し、「分かったつもり」になる危うさがあります。だからこそ私たちは、AIを単なる答えの供給装置としてではなく、問いを深めるための道具として使わなければなりません。自ら問いを立て、考え、対話し、時には迷いながらも理解を深めていく。その積み重ねこそが、本当の意味での「学び」なのです。
平和な社会の実現において大切なことは、一人ひとりが尊重され、希望をもって生きられる社会、すなわち「共通善」を守ることです。そして、それを実現するために、自らの意思で行動することです。
今日から始まるみなさんの学びは、そのための第一歩です。私たちは生徒にいつも「大学がゴールではない」と語りかけます。みなさんの大切な人生、希望に溢れる人生、その土台を作る大切な十代の学びが大学合格のためだけであるはずがありません。わたしたちには、自分自身が今ここに生き、生かされている一瞬一瞬の出来事について、物事の本質を見極め、真理を探究する姿勢が求められています。人は、自らの利益だけでなく、他者のために行動することができる存在です。これからの社会において、何が正しいのか。どのように行動すべきなのか。その問いに向き合い続ける力こそが、みなさんに求められています。そして、人として本当に大切なものが何なのかを見極め、それを守り抜く知恵と勇気を育んでください。
みなさんの中には15の春がイメージ通りにいかず、今この瞬間も心の整理が完全についていない状態で入学式の席についている方もいるかもしれません。中には、これまでの歩みが思い通りではなかった人もいるかもしれません。しかし、わたしたちは自分の力で過去を変えることができない以上、現在を受け入れ、前を向き、未来に向かって歩いていくことしかできません。ただ変えることができない過去に対し、受け入れざるを得ない現在に対し、いかなる「運命」にも意味があるはずであると洞察し、未来をよりよく、強く、しなやかに生き抜くための教材とすることはできるはずです。そしてそれこそが、安易にAIに答えを求めない「人間」としてのあるべき姿です。ぜひ、「運命」が自分を成長させてくれることに感謝できる人となるよう札幌光星でベストを尽くしてください。
札幌光星には、互いを思いやり、支え合う仲間がいます。共に学び、共に成長する仲間、先輩、そして教職員がみなさんを支えます。この学園での出会いを大切にし、人と人とのつながりの中で、自らを高めていってください。
本校の校訓「地の塩 世の光」とは、自らの力を誇るのではなく、その力を社会のために役立てるという意味です。それぞれが自分の持ち場で最善を尽くし、社会に貢献できる人へと成長してほしいと願っています。他者との関わりの中でこそ、人は真の幸福に近づくことができます。人のために尽くすことに喜びを見出せる人になってください。本校は、その実現に向けて全力で支えてまいります。
保護者の皆様におかれましては、本校へのご理解とご信頼を賜り、心より感謝申し上げます。これからの3年間、お子様の成長をともに支えてまいりますので、引き続きご支援とご協力をお願い申し上げます。
本日はご入学、誠におめでとうございます。
大きな可能性に瞳を輝かせ、この場に臨まれた男子68名、女子58名、合計126名のみなさん。今、名前が呼ばれ、入学が許可されました。札幌光星中学校へのご入学、誠におめでとうございます。みなさんの入学を心より歓迎いたします。本日ご来賓の父母の会会長 堀江直人様とともに、この良き日をお祝い申し上げます。また、これまでみなさんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
本校は1934年にドイツ人宣教師キノルド司教によって創立されました。カトリック・ミッションスクールとして、当初は男子校として進学校の評価を確立し、2008年からは共学校に再編され、向学心の高い女子生徒も受け入れてまいりました。札幌の地にあって、この地域は「光星地区」と呼ばれ、地域の皆様にも愛着を持っていただける伝統を積み重ねてきました。そして8年後の創立100周年に向け、さらなる発展を目指している学園です。これまでに3万名以上の卒業生を輩出し、先輩たちは北海道内にとどまらず、さまざまな分野で活躍しています。みなさん一人ひとりも、そうした先輩たちと同じように次の時代を切り開く希望に満ちた存在として活躍することを心から願っています。
新入生のみなさんは、札幌光星での新生活に、どのような期待を抱いているでしょうか。教科書を使わない光星独自の探究的な学びであるルクスプログラムでしょうか。フレンドシップミーティングやサマースクールなどの宿泊行事でしょうか。運動系・文化系の中から興味のある活動に取り組めるサークル活動でしょうか。学校祭やスポーツデイ、遠足や芸術文化発表会などの行事でしょうか。あるいは、英語体験やファームステイなどを通じた異文化交流、オーストラリア研修旅行でしょうか。さらに、本校の経営母体であるマリア会が運営する国内5つの姉妹校の仲間とともに、ハワイの姉妹校セントルイススクールで行われる8日間の研修もあります。今年度からは、韓国の姉妹校である木浦マリアニストスクールを訪問する研修も始まります。
こうした多彩な行事やアクティビティをはじめ、これから始まる6年間の学校生活のすべての学びは、札幌光星ならではの内容です。それぞれの体験は、みなさんの人間性をより豊かにし、深く結びつきながら、大きな財産となっていくことでしょう。みなさんは今日この瞬間から、すべての学習、すべての行事、すべての出会いに心を開き、積極的に吸収し、自らの成長の糧としてください。
そのために、常に心掛けてほしい姿勢について、先ほど朗読された新約聖書「マタイによる福音書7章7節~11節」最後の一節で、聖書の言葉は次のように示しています。
「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」
これを逆の表現にすれば、「人にされたくないことは、人にしてはならない」ということです。このような思いやりをもって生活することで、平和な日常が生まれることは、みなさんにも想像できるはずです。みなさんの多くはキリスト教の信者ではありませんから、これまで聖書に触れる機会は多くなかったかもしれません。本校では週に一度、宗教の授業があり、聖書のメッセージについてじっくり考える機会があります。これもまた、札幌光星で学ぶ大きな特徴の一つです。
信者であるかどうかは、聖書の意味を理解する上で大きな問題ではありません。人として正しく生きるとはどういうことか。少し難しい言葉で表すとすれば、「共通善」を識別する生き方を身に着けてほしいという願いが、本校の教育の根底にあります。札幌光星は、「大学がゴール」ではなく、「他者のために尽くすことのできる人間」への成長を目指します。
そのような視点で世界を見ると日々報道される出来事の中には、悲しみを感じさせるものが少なくありません。世界の平和を守るべき立場のリーダーが、自らの利益を優先し、歴史に学ばず、耳障りのよい情報に流されることで、世界を不安に陥れる出来事が繰り返されています。誰の幸せのために、多くの命が奪われなければならないのか。本当に平和のために働くとはどういうことなのか。みなさんには、その問いを識別できる大人へと成長してほしいと願っています。そのために、多くを学び、多くの人と関わり、自らの才能を、必要としている人のために生かす準備をしていってください。
本校の校訓は「地の塩 世の光」です。この言葉は新約聖書「マタイによる福音書5章13節~16節」に由来します。その意味は、自分の力を誇示することなく、持てる力を必要とする人々のために惜しみなく差し出し、それぞれの立場で最善を尽くし、社会に貢献する人間になるということです。
また、これからの時代は、AIと共に生きる力も求められます。AIの進化は開発当初の予想をはるかに超えるスピードで進み、今や私たちの生活に欠かせない存在となっています。
私は、AIに「12歳の青少年が2040年に幸せになるために今すべきことは何ですか。」という質問をしたところ、一瞬にして次のような7つの答えが返ってきました。
①学び続ける力(学び方を学ぶ)
将来は知識そのものより、「どうやって学ぶか」が価値になります。分からないことを自分で調べるクセをつける。1つの答えだけでなく、複数の考え方を見る。本・動画・人からバランスよく学ぶ。テストの点より「理解の深さ」を大事にするのがコツ。
②言葉とコミュニケーション力
AIが発達しても、「伝える力」は人間の強みです。自分の考えを言葉にする(話す・書く)。相手の話をちゃんと聞く。違う意見でも否定せず理解しようとする。将来、どんな仕事でもここが差になります。
③デジタルを使いこなす
2040年は今よりさらにテクノロジー中心の社会です。パソコン操作(タイピング・資料作成)。ネットでの情報の見極め。AIツールを「使う側」になる。ただ使うだけじゃなく、「どう使えば役に立つか」を考えるのが重要。
④好きなことを見つけて深掘りする
「好き」は強い武器になります。ゲーム、スポーツ、絵、音楽、何でもOK。人よりちょっと詳しくなるまで続ける。小さくてもいいから作品や成果を作る。将来は“好き×スキル”が価値になる。
⑤失敗に強くなる
これが実はかなり重要です。失敗=ダメではなく「データ」。恥ずかしがらずに挑戦する。小さく何度も試す。2040年は変化が早いので、「やり直せる人」が強い。
⑥体とメンタルを整える
幸せの土台はここです。睡眠をしっかりとる。運動する。スマホとの付き合い方を考える。頭が良くても体がボロボロだと長く活躍できません。
⑦良い人間関係を作る
将来のチャンスは「人」から来ます。信頼される行動をする。約束を守る。困っている人を助ける。能力だけでなく、人柄がすごく重要になる時代です。
確かに、どれも納得できる内容です。一瞬でここまで体系的に整理された答えが得られるという点において、AIは非常に優れた道具です。しかし、ここでみなさんに考えてほしいのです。これらの答えは、本当に自分自身が腑に落ちるものとして理解できるでしょうか。その言葉の一つひとつを、自分の問題として捉えることができるでしょうか。そして、それを自分の言葉で語ることができるでしょうか。
AIは、膨大な情報をもとに「もっともらしい答え」を導き出すことには長けています。しかし、その答えが私たち自身の思考の「本質に迫っているかどうか」を判断する力は、私たち自身に委ねられています。便利さの裏側には、考える力を手放してしまう危険性があります。「タイパ」と称されるような効率を追い求めるあまり、思考の過程を省略し、「分かったつもり」になる危うさがあります。だからこそ、AIは答えを得るためではなく、問いを深めるために使うべきです。自ら問い、考え、対話し、迷いながら理解を深めていく。その積み重ねこそが本当の学びです。
自分自身が今ここに生き、生かされている一瞬一瞬の出来事について、物事の本質を見極め、真理を探究する姿勢が求められています。人は、自らの利益だけでなく、他者のために行動することができる存在です。これからの社会において、何が正しいのか。どのように行動すべきなのか。AIに頼るだけでなく、その問いに向き合い続ける力こそが、みなさんに求められています。そして、人として本当に大切なものが何なのかを見極め、それを守り抜く知恵と勇気を育んでください。
保護者の皆様に申し上げます。本日はご子息・ご息女のご入学、誠におめでとうございます。本校へのご理解とご協力に心より感謝申し上げます。今年度は、本校が中学校を1994年に再開して以来、最も多い入学生をお迎えすることになりました。多くの皆様に本校を選んでいただけたことを大変うれしく思うとともに、その期待に応える責任の重さも強く感じております。環境の変化により、ご心配な点も多いかと存じますが、教職員一同、力を合わせてお子様を支えてまいります。本校は「学校は楽しいところ」をモットーとしております。どうぞ安心してお子様をお預けください。
新入生のみなさん。本校での6年間を通して、知性と人間性の両面で大きく成長し、他者のために生きる喜びを実感できる人になってください。6年後、皆さんが有終の美を飾り、それぞれの道へ羽ばたいていくことを心より期待しております。
本日はご入学、誠におめでとうございます。