札幌光星中学校・札幌光星高等学校

校長メッセージ

自ら社会を照らす「光」となり 平和で豊かな未来を創るリーダーを育成

学校法人 札幌光星学園 札幌光星中学校 校長 札幌光星高等学校 校長   駒井 健一郎

 世界中を震撼させている新型コロナウイルス感染症への対応を通し、学校で日々展開される他者とのかかわりが、人格の形成や社会性の向上を実現させるという点で再評価されています。情報社会が進み、インターネットやSNSなどの影響が大きくなる一方、社会全体で血の通った会話が成立しにくくなり、明るい未来を展望させることが難しくなったと言われます。こうした現代社会の光と闇が、今般のコロナ禍によってさらに強められました。人と人とが対面できない「ニューノーマル」は、コミュニケーションの大切さを痛感させます。このような現状により、「学校」での学びや人とのつながり、連帯して何かを作り上げることに対し、多くの期待が寄せられています。
 創立から90年近くの間、本校がカトリックミッションスクールとして大切に伝えてきた「他者のために自らを尽くす」という教育方針は、不透明な未来をたくましく生きるための大きな力になると確信しています。そして本校はこの教育方針に沿って生徒たちに次の二つの力が備わるよう運営しています。
 一つは、充実したカリキュラムを提供し、生徒一人ひとりが希望の進路へ就くための「確かな学力」をつけることです。本校はすべての生徒に国公立大学を軸とした進路指導をおこなっています。さらに今年度からは全生徒にipadを持ってもらいました。中学生、高校生が活躍する2030年をイメージし、AIやIoT、ソサエティ5.0、シンギュラリティなどに称される次世代高度情報社会へ対応する力を備えていきます。
 もう一つは、カトリックミッションスクールならではの宗教教育や多彩な行事への経験を通し、主体的に探求心をもって学ぶ姿勢、「未来を俯瞰する力」をつけることです。今春も卒業生の頑張りで、北海道大学20名をはじめ、国公立大学163名の合格者を出すことができました。私立大学でも早稲田大学、慶応義塾大学、上智大学、東京理科大学をはじめ、延べ1000名を超える合格実績を残すことができました。しかし、数以上に大切なことは、日頃から「大学がゴールではない」と語りかけている通り、大学やその先の自らの人生を創造する力を備えてもらうことなのです。
 本校の校訓である「地の塩 世の光」という聖書のメッセージ通り、生徒一人ひとりが「確かな学力」と「未来を俯瞰する力」を身に着け、広い視野をもち、平和な社会を築くために貢献できる人物となれるよう、これからもきめ細やかなサポートをしてまいります。

一学期終業式  2021年9月29日

 今日で一学期が終わり、明日から4日間の秋休みになります。それぞれの学年の折り返しを迎えます。6年生は、実質残り3か月の登校期間となり、その先の進路へ向けて具体的に行動する時期になります。各自の進路への戦略の確認、スケジュールの確認、そして何よりも「気持ち」「思い」の確認をこの4日間に行ってください。5年生は、修学旅行が迫ってきます。いつも以上に体調管理に気を付けてください。そして修学旅行が終われば、大学受験へ向けてシフトチェンジしていくことになります。自分の進路について探求する時間をこの4日間で持ってください。1年生から4年生の皆さん、一学期期末試験を終え、総合成績が確定しましたが、6月の中間試験以降、4月当初と比較し、学習への取組に妥協はありませんか。今年度入学した1,4年生の皆さん、入学からの8か月間に染み付いた学習習慣は、その後の学年での位置や進路を決める大きな要因となります。今が踏ん張り時です。10月末の全国模試や11月30日からの二学期中間試験に向け、自分の壁を越える挑戦をしましょう。

 本校は札幌市中心部に位置しますが、90年近くこの地にあるため、学園は緑に囲まれ、季節ごとに豊かな自然を楽しむことができます。GW頃の北13条通の本校の桜並木は、ネット上では札幌市の隠れた桜の名所にもなっています。ところで、本校に立ち並ぶ木々の中で、一番背の高い木を知っていますか。それは野球部のバックネット裏にあるメタセコイアという木です。メタセコイアはアケボノスギとも呼ばれ、一般に高さ35m、幹の直径は2mほどに成長します。この木の幹に「昭和48年5月12日 第5回卒業生 卒業30周年記念植樹」というプレートが掛けられています。恐らく樹齢50年の大木です。札幌光星をずっと見守ってきた木です。皆さん、ぜひ一度、見上げて確認してみてください。
 メタセコイアは、気候が温暖だった6600万年前~3400万年前にシベリアやカナダなどの北極圏を中心に北半球の広い地域に分布し、その後の地球の急激な寒冷化により絶滅したと考えられていました。80年近く前に日本人の植物学者、三木茂が国内でこの木の化石を発見し、1942年にメタセコイアと命名しました。その4年後の1946年に中国人の学者によって四川省で現存していることが確認されました。1948年、アメリカ人の学者チェイニーが中国から苗を持ち帰り、アメリカで育てられた100本の苗木が日本のメタセコイア保存会に送られ、国内の研究機関や自治体に配布されました。メタセコイアは挿し木でどんどん増え、成長も早く、今では秋になると日本各地に紅葉の素晴らしい景色を届けてくれます。
 実はアメリカで育てられたメタセコイアは、昭和24年(1949年)には昭和天皇に献上され、天皇はみずから皇居に植えたのだそうです。そして、昭和62年(1987年)の歌会始で、昭和天皇は次のように詠まれました。
 
「わが国の たちなほり来し 年々に あけぼのすぎの 木はのびにけり」

 ご自身で植えられたメタセコイアの成長と戦後日本の復興を重ね合わせた歌です。また昭和天皇は、お亡くなりになる直前に出版された「皇居の植物」という本の序文にメタセコイア発見と皇居に植えられるまでの経緯を紹介し、「米国と中国と日本とを結ぶ協力が調査に良い成果をもたらしたと言えることは誠に喜ばしい」と著わされています。
 今日、アメリカ、中国、日本の3国は政治・経済・環境・そして新型コロナウイルス感染症への対応など、あらゆる面で「微妙な関係」にありますが、安定した世界平和を実現するため、「微妙な関係」から「知恵を出し合う関係」を築いていかなければならないはずです。今日の話から第二次世界大戦前後の極限の国際情勢の中で、日本、中国、アメリカの植物学者が絶滅したと考えられていたメタセコイアを通し、国際協調したことの「シンプルさ」を大切にしたいと思います。

 明日で緊急事態宣言が明けます。来週からは学校も8時30分登校に戻ります。放課後の活動も平常通りに戻します。そして10月に入りますので制服も冬服に衣替えです。感染症への対応は相変わらず続きますが、皆さん、気分一新、二学期の良いスタートを切りましょう。

夏休み明けの全校集会  2021年8月18日

 おおよそ1か月ぶりにみなさんが揃って登校してきました。残念ながら新型コロナウイルス感染症の第5波の影響で、6年生の夏休み勉強会が中止になったり、部活動の合宿や練習試合ができなかったり、今日もこのように時差登校になり、放送による集会となるなど、学校生活にもさまざまな制限がかけられることになりました。こんな我慢がいつまで続くのかと嫌気がさすところをぐっとこらえて、これまで以上に感染力が強いといわれるデルタ株に十分注意しながら、札幌光星は、極力皆さんが登校し、一緒に生活する場を守っていきたいと思います。皆さんにもいろいろな協力をお願いしますが、学校に集える状況を一緒に守っていきましょう。
 今日の私の話は、戦争についてです。昨年の夏休み明けにも戦争に関する話をしました。戦後76年が経ち、戦争を記憶している人は年々減少しています。終戦の時に5歳以上だった人は、この国の9.2%にまで減少しており、私たちの多くは戦争を体験していませんが、戦争の恐ろしさを後世に伝える使命は持っています。
 6年生と4年ABC組の皆さんは、昨年度、修学旅行で広島を訪れ、戦争の恐ろしさ、平和の尊さを学んできました。その時のことも思い出しながらこれから紹介する被爆体験を聞いてください。
 青木美枝さんは当時23歳。結婚の話がまとまり、小学校の教員を辞めた直後でした。あの日は中心部から2キロほど離れた自宅にいました。「洗濯でもしなくちゃ」と空を仰いだ瞬間でした。ピカーッと、マグネシウムどころではない、その何億倍もの光が目の前を走りました。ガラガラと家が崩れ、土煙が落ち着くと、4歳下の妹、久枝ががれきに埋もれていました。両親の声はしませんでした。きっと爆弾だ。助けを呼ばなくちゃ。壁に穴を開けて外に出ると、広島市内は見渡す限り家が一軒もなくなっていました。「誰か、誰か」と裸足で呼んで駆け回りましたが、「熱い、熱い」とぼろ切れのような皮膚を垂らして歩く人はまだ元気な方で、目を見開いた死体が、そこらじゅう転がっていました。いったん家に戻ると妹は「お姉様、私にかまわないで逃げて」と言います。やっと通りすがりのおじさんを捕まえたとき、家は火の手に包まれていました。「ここにいたら死んじゃう。あきらめなさい」。おじさんは逃げました。私は何度も振り返り、ごめんね、ごめんねと、拝みながら逃げたのでした。
 人類史上初の原子爆弾は、地上600mの上空で炸裂し、中心温度100万度の火の玉をつくりました。爆心地周辺の地表の温度は3000~4000度に達したといいます。爆心地から1.2kmの範囲内では、その日のうちに約半分の方が亡くなりました。当時の広島市の人口約35万人のうち1945年12月末までに約14万人が死亡したと推計されています。
 もう一つ別の話を紹介します。私が通っている教会に81歳という年齢を感じさせない、若々しい男性がいます。いつも明るくボランティア活動などに参加していますが、ある日、戦争について次のように真剣に語ってくれました。
 当時横浜に住んでいた私(5歳)は、ある昼過ぎに空襲警報が鳴り響き、母と弟(4歳)と一緒にすぐ近くの防空壕に避難しました。しばらくして弟が「オシッコがしたい」と言うので、母は、私たち二人を連れて家に戻った時、海の方から戦闘機が私たちに向かって突っ込んできました。「バリバリッ」と機関銃のはねる音。三人で庭に伏せたのですが、弟の左足首がちぎれそうになっていました。救急避難所の小学校に行くと、死者や負傷者がゴロゴロ。「共同防空壕の前に小型爆弾が落ちて中にいた人たちが死んだ」と聞かされました。母は言いました。「あの子がオシッコと言わなかったら、我々三人もこうして生きていなかったね」と。まったく知らないごく少数の人間が、まったく知らない多数の人間を無差別に殺す。こんな理不尽なことが正当化される。残酷で悲惨。これこそが「戦争」の実態だと思っています。単に戦争当事国の人間であったというだけなのに、月日が経った後、被害者側は勿論、加害者側も人間として深く大きな心の傷を負い、そこに勝者はいません。
 これが戦争の現実です。幸いにも76年もの間、わが国では戦争がない平和な状態が維持されていますが、今この瞬間も世界のどこかで戦争に巻き込まれ、尊い命が奪われ、多くのものが破壊され、人権が踏みにじられています。
 戦争の恐ろしさ、むごさ、を知る方法はたくさんあります。毎年、夏の終わりに、戦争について真剣に考える時間をほんの少しだけでも、もってほしいのです。

夏休み前の全校集会  2021年7月21日

 10日前は、2年ぶりに開催し、みなさんのエネルギーが結集し、大成功だった光星祭で大いに盛り上がりました。その後、毎日きびしい暑さが続きましたが明日からは夏休みが始まります。また、1年延期された東京五輪も今日から一部の競技が開始され、明後日には開会式を迎えます。菅首相は、1月の通常国会開催の施政方針演説で「夏の東京オリンピック・パラリンピックは人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証として、また東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」と話していました。あれから半年が経ちました。さまざまな意見がある中で、東京と沖縄の緊急事態宣言、関東三県と大阪のまん延防止等重点措置の下での開催となります。コロナ以外にも言論や思想、人権に関わる騒動に左右され、いろいろな意味で国内外から注目を集めることの多かったこの五輪から、多くの教訓を得ることになるでしょう。この国の未来を担う私たちが、今回のあらゆることの検証をしっかりと行わなければならないと感じています。
 この夏に勝負をかけるという点では、五輪と同じく厳しい予選を勝ち上がり、全国大会へ出場する選手の壮行会をこの後で行います。道産子選手はコロナとの戦いに加え、本州の猛暑との戦いにも臨まなければなりません。出発前からの体調管理も勝負のうちです。どうぞ丁寧に準備してほしいと思います。昨年、戦う機会すらあたえられず、悔しい思いをした先輩たちの分まで全力で戦ってきてください。
 6年生は月並みな表現になりますが「勝負の夏」です。ここで皆さんに受験生の夏休み必勝法を伝授します。とてもシンプルなことなのですが、「早寝早起き」をすることです。夏休み期間中、早起きをし、まず午前中に4時間勉強できるかどうかが勝負の分かれ目です。学習方法について断定的な言い方をしましたが、大切なことは、せっかくの夏休みに、何か自分で計画を立て、やり抜くことです。勉強に限らず、何かを決意し、挑戦し、自分を変えられることを実感する夏休みにしてほしいと思います。自分が変わったことを証明できるのは自分だけです。8月18日には、お互いに成長した姿を持ち寄って、学校を再開できたらと思います。
 最後に皆さんと皆さんのご家族が健康な毎日を過ごされるよう心よりお祈りいたします。

7月全校集会  2021年7月1日

 GW明けからの新型コロナウイルス感染症の急拡大で、1か月以上続いた緊急事態宣言が6月20日にようやく解除され、学校生活も先週から時差登校を止め、徐々に日常を取り戻そうとしています。緊急事態宣言中も毎日全員が登校し、授業数を大きく削ることなく、また制限があった中でも部活動や放課後活動を継続できたこと、みなさんの感染防止への意識の高さがなせる業であったと感じています。みなさんの協力に深く感謝します。ありがとうございました。あとで紹介しますが、いろいろな制限の中でベストを尽くし、優秀な成績を収め、インターハイへとコマを進めた部活動もたくさんあります。また生徒会を中心に来週末に迫った光星祭の準備に多くのみなさんが創意工夫をしてくれています。そして6年生は、受験に向けて模擬試験や特別講習にしっかりと臨んでくれています。この先も、もうしばらくは感染予防を徹底しつつ、しかし今できることには全力で取り組んでいきましょう。
 さて、今流れている音楽は、5月中旬から放課後の活動を終える時間に流れていますので、聞き覚えのある人も多いと思います。この曲は、The Lord’s Prayerという曲です。みなさんが宗教の授業で教わった(天におられる私たちの父よ)で始まる「主の祈り」の英語訳に曲をつけたものです。英語圏の国々では、多くの方に歌われているそうです。ここでは、アメリカ人の歌手ジャッキー・エヴァンコさんが歌っています。彼女は2000年にペンシルベニア州ピッツバーグで生まれ、10歳の時に出場したオーディション番組で準優勝。その年にメジャーデビューを果たします。この曲は彼女が11歳で発表した2ndアルバムに収録されています。アルバムはビルボードという音楽雑誌の中で全米2位の売り上げを記録したと紹介されています。10代前半から世界的ステージでその美しい歌声を披露してきた彼女ですが、その名を世界に轟かせたのは、2017年1月のトランプ大統領就任式での国歌斉唱でした。当時、トランプ大統領の就任には、その過激な発言や専制的な政治スタイルに反発する人も多く、就任式で国歌斉唱を引き受けることへの様々な抗議や非難がありました。実際に彼女が引き受ける前にも多くの歌手が国歌斉唱の要請を辞退しています。そのような状況の中、彼女は国歌斉唱の大役を引き受けたのです。彼女はこう言っています。「たくさんの人の前で国歌を歌わせてもらえることはとても光栄なことです。政治的な思考やトランプ大統領の党を強く支持しているわけではないのです。私の願いは、みんなが一つになって何の思惑もなく国歌を聴いてほしい、歌ってほしいとの願いからです」と。そして彼女が国歌斉唱を引き受けた理由がもう一つありました。それは、「手術するお兄さんを勇気づけたい」という思いがあったのです。実はお兄さんも彼女に負けないくらい歌が上手だったのですが、妹が「天使の歌声」と世界中から賞賛されるほどの美声だったため、到底勝てないと判断し、歌手をあきらめたようです。一方でお兄さんは「性同一障害」という大きな悩みも抱えていました。一大決心の末、彼女の国歌斉唱の日に男性から女性になるための性転換手術を受けることになっていたのです。彼女は、幼いころから性同一障害に悩んでいたお兄さんを見て、お兄さんが女性になることを応援していました。大好きなお兄さんに歌う姿を見せ、勇気づけ、手術に臨んでほしかったのです。国歌斉唱は大成功し、トランプ大統領はもちろん、世界中からの賞賛を受けました。
 ところが大統領就任式の翌月、トランプ大統領やペンス副大統領は、性的マイノリティー(LGBT)に対し厳しい考え方を持っていたため、オバマ前大統領が公立学校に出したトランスジェンダーの生徒の権利を守るための通達を破棄しました。これに対し、エヴァンコさんはトランプ大統領に自分と性転換手術を受け、兄から姉となったジュリエットさんに面会し、LGBTの生徒が直面している問題について耳を傾けるよう求めたのです。彼女は「大統領の決定に完全に失望している」とした上で、「トランプ大統領は就任式で歌うという栄誉を私に与えてくれた。トランスジェンダーの権利について話す機会も私と姉に与えてもらいたい」と話しました。兄から姉となったジュリエットさんと一緒にテレビ番組に出演したエヴァンコさんは、トランプ大統領からまだ返事はないと明かし、「私はただ、私の姉やそういった立場でつらい思いをしている方々について、多くの人に理解してもらいたいだけです。小さなころから姉が毎日学校でつらい体験をするのを見てきました」と語りました。ジュリエットさんは「物を投げつけられたり、ひどいことを言われたりした」と述べ、トランスジェンダーの生徒が直面している脅威について大統領に知ってもらいたいと訴えたのです。
 日本でも、現在、LGBTの人たちはさまざまな困難に直面しています。ある調査では、日本人のLGBTの比率は8.9%で、この数字は、11人に1人の割合にあたり、「左利きの人とほとんど同じ割合」とも言われています。しかし、他の調査では13人に1人という数字や中には全体の3%しかいないという報告もあります。ただ、数値の低い調査結果は、自らを性的マイノリティと自認していない、または、自認したくないという方がいるという点を無視できません。学校や職場、病院など社会生活の多くの場面で差別的な言動を受け、公的制度の不備や性的マイノリティへの偏見に対する不安から民間や公共のサービスを受けることができずにいる人。家族や友人、身近な人に理解されず、社会から孤立し、苦しんでいる人など、基本的人権や命の尊厳にかかわる深刻な問題を抱えている方が数多くいるのです。
 エヴァンコさんが、トランプ大統領に自分自身の家族の悩みからトランスジェンダーに関する問題を提起したのが16歳の時です。ちょうどみなさんと同じ年代です。私は、彼女が「大切な人を守りたい」「苦しんでいる人を助けたい」という思いから世界を動かすほどの勇気ある行動をとることができたという点で、黒人への不当な差別、暴力についてメッセージを出し続け、今はメンタル面での休息を必要としているテニスプレーヤーの大坂なおみさんとも共通するところがあると感じました。
 札幌市では、「LGBTほっとライン」を設置し、トランスジェンダーなどの悩みについて、電話で相談できるようになっています。その他にも少しずつ性的マイノリティーに関する支援の輪が広がっていることは大変によい傾向だと感じています。この動きを応援したいと思います。
私たちは、意識をしていないと「自分と違うもの」に抵抗感を覚えてしまいがちです。そしてこの問題に限らず、私たちの抵抗感は、数が多ければ負の結束をし、拒絶し、激しく攻撃することもあります。しかし、誰一人、他の誰かと全く同じということがない、当たり前の現実を受け入れるべきではないでしょうか。みなさんは、自分が少数派になった時のことを考え、攻撃されないように本当の気持ちを押し殺して多数派の陰に隠れていたという経験はないでしょうか。みなさんが、心の不安や多数派という強迫観念から解放され、他人との間には「違い」があるということを認め合うこと、「違い」について理解しようと努めることが、みなさんの人生を豊かにし、そして多くの人に支えられるものとなることをイメージしてほしいと願っています。

令和3年度 始業式(2021年4月9日)

 本日より令和3年度の学校生活がスタートいたします。昨日の中学校入学式で64名、高校入学式で335名の新しい仲間を迎え入れることができました。あらためて、入学おめでとうございます。2年生86名、3年生89名、5年生303名、6年生435名の光星の先輩たちと、112名の先生方と22名の職員一同、新入生のみなさんのことを心から歓迎いたします。今年度は、中学生239名、高校生1073名、学園としては合計1313名の生徒の皆さんと140名弱の教職員、そしていつも校舎を綺麗な状態に保つよう清掃してくださっている10名の方々や24時間交代で学園を警備してくださっている3名の方々を合わせ、1460名ほどの光星ファミリーで令和3年度をスタートします。ちょっとした村の人口よりも多いこの学園に関わるすべての方々が、毎日、笑顔で挨拶を交わし、この空間を愛してくれたら最高です。そんな、信頼と安心の場を今年度もみなさんと一緒に作っていきたいと思います。
 この始業式を今日も放送で行っていることが少し残念ではあります。しかし、「すべての命を守るために」、今はまだ新型コロナウイルス感染症への対策をとっていかなければなりません。今年の初めに、日本でも2月中旬からワクチン接種が始まるだろというニュースから、早期の感染症終息を期待させるような雰囲気もありましたが、ワクチンの供給が計画通りでなかったり、国内でも変異株が確認されるようになり、今はもうしばらく忍耐が必要なのかなという印象をみなさんも持ってると思います。札幌も4月16日まで、ステージ4相当と警戒を強めています。油断をせず、しっかりと感染症への対策をとりましょう。ただ、昨年の今頃との違いは、私たちは正しく恐れる方法を身に着けました。当初は行事や部活動で何度となく残念な思いをさせられてしまいましたし、授業も十分に実施できず、不安な思いをつのらせた人も多かったと思います。しかしながら、昨年の秋以降は学校を長くお休みにするようなこともありませんでしたし、みなさんの協力で修学旅行など実施することが困難な行事にもチャレンジできました。これらはすべて皆さんの協力と日々の丁寧な対応とがあったからです。今年度も可能な限り、学校での活動を行い、みなさんの学校生活が潤いあるものとなるよう取り組んでいきます。よろしくお願いします。5、6年生のみなさんは「受験は団体戦」という言葉を聞いたことがあると思いますが、「コロナ対応も団体戦」です。何よりも大切なことは、みなさんがこの学校に通うことを楽しいと感じ、友人や先生方に支えられていることを実感する毎日を送ることです。この先もコロナは、私たちに否応なしに難しい判断を迫ってくるでしょうが、進むときにも立ち止まるときにも、その判断に至るまでにはベストを尽くしたと自信をもって言えるよう、みなさんと気持ちを一つにして団体戦を戦っていきたいです。
 ところで、「団体戦を戦う」とは、どういうことなのでしょうか。野球の試合をイメージしてください。1点差を追う9回2アウト満塁という場面で、バッターが三振してしまいました。その時、「バッター何やっているんだよ」と言うのは、テレビで野球を観戦している人。フィールドやベンチから同じチームの仲間を応援する立場だったら、その時、その選手が打つしかない状況を理解し、そして誰も三振するつもりで打席に立っているわけがないことを理解し、必死になって戦っていると知っているから、悔しさとともにその結果を受け入れるでしょう。一番心が折れそうな人の側に寄り添えることが「団体戦を戦う」ことだと思います。もちろん、バッターがサヨナラヒットを打った時の喜びもテレビ観戦している人とは比較にならない大きさでしょう。傍観者や第三者ではなく、当事者として、チームメイトとして、ファミリーとして私たちは係り合っていきたいものです。そして様々な場面で、私たち光星ファミリーの底力を見せていこうではありませんか。そんなワクワクするような毎日をみなさんと一緒に作っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

令和3年度入学式 式辞(2021年4月8日)

 大きな可能性に瞳を輝かせ、この場に臨まれた新入生のみなさん、御入学、誠におめでとうございます。また、これまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
 本校は1934年の創立から数え、今年の11月で87年の歴史を迎え、これまで3万名を超える多くの優秀な人材を輩出してきました。本校の歴史は、まさしく先輩方がたゆまぬ努力の上に築き上げた財産の積み重ねによるものです。皆さんも歴史と伝統ある札幌光星の生徒として、その名に恥じぬよう、責任と自覚をもって行動してほしいと思います。
 さて、今日から新生活が始まります。学校生活が楽しく、そして実り豊かなものとなるよう、精一杯努力してください。皆さん一人ひとり、本校を選んだ理由があると思います。夢と希望をもって入学したはずです。その夢と希望をかなえるために、私たち教職員は、全力で皆さんを応援します。一人ひとりにとって卒業の際の進路が実り豊かなものとなるよう、その手助けをしっかりと行っていくことを、ここにお約束します。
 みなさんの夢と希望の実現のために申し上げたいことは、本校の教育方針と理念です。本校の校訓「地の塩 世の光」は、キリストが人々に示した理想的な人間像を、一人ひとりの生徒の中に実現することを目標としています。その理想的な人間像とは、他者との係わりによってしか実現されず、ひいてはその係わりが、自分の幸福の実現に至る唯一の道であると考えています。本校では、生徒がその理想を実現するために、万難を排して努力し、獲得した能力によって社会のあらゆる分野に核となる地位を築き、他者のために働き得る人材となるよう指導しています。校訓には将来、社会の中で、陰となり日なたとなりながら、多くの人のために力を尽くす人になってほしいとの願いが込められているのです。
 1年ほど前からの新型コロナウイルス感染症の影響による想像を絶する出来事により、世界中が各方面で解決困難な状況におかれ、多くの犠牲を払っています。皆さんもそれぞれの学校での1年を様々な困難を強いられ、その区切りもないまま、本日の入学式を迎えていることでしょう。この失われた1年間の代償は、簡単には埋められません。それでもこの状況を受け入れざるを得ない時、私たちの行動が「すべてのいのちを守るために」とられていること、そしてその行いは尊く、愛にあふれているのだと自覚したいものです。自分の身を守ることだけではなく、他者の命にも心を配る思いやりが、この忍耐を支えているのだと自覚したいものです。カトリックミッションスクールである本校の一員となった皆さんに求められていることとは、まさしくこのこと、つまり「自己犠牲」であり、自らの権利のみを主張するのではなく、社会の中での連帯と思いやりを意識した行動をとれるようになってほしいのです。
 わたしたちは、この理不尽な感染症が、どうして今、この時に起こり、こんなにも世界中を混乱させているのかわかりません。今回の事態で、多くの尊い命が奪われました。また、病気に苦しむ人、病人を支えるために懸命に闘う人、経済の悪化に苦しむ人、雇用を失う人。世界中には、様々な状況下で命の危機や精神の限界に直面する人たちであふれています。私たちは、人としてどうのようにこの状況と向き合うべきなのでしょうか。キリストは、その態度として「人とともに、人のために苦しみ、真理と正義を守り抜くために苦しみ、真に愛する人となるために苦しむ」ことを求めています。私たちがコロナ禍で本当に試され、求められていることとは、そしてそのゴールとは、医学の進歩によるウイルスの撲滅ではなく、人類がどのような困難にも連帯して立ち向かうことができるという「信頼」や「安心」に包まれた社会を築くことのはずです。
 本日入学された皆さんには、本校での学びを通し、他者のために生きる喜びを本当の喜びとすることができるよう、知的にも人間的にも大きく成長することを期待します。そして、その姿勢こそが、本校の校訓「地の塩・世の光」が求めるところなのです。
 保護者の皆様、御子息、御息女の本校への御入学に御理解をいただき、こころから感謝申し上げます。環境が大きく変わり、何かと御心配なことも多いかと思います。担任をはじめ、学園が一致団結してサポートしてまいります。学校は楽しいところです。どうぞ安心して学校に送り出してください。これからの御支援と御協力をお願いいたします。
 新入生の皆さん、学校生活を始めるにあたり、自らの健康を大切にし、体と心を鍛え、しっかりと勉学に励んでください。新たな友人と出会い、語らい、生涯の友を数多く作ってください。皆さんが本校を巣立つ日には有終の美を飾り、次のステージへと羽ばたいていくことを心より期待しています。